研究概要

study2013-1

1.樹木の環境適応,特に水分生理に関する研究

樹木は,生涯を通して様々な環境ストレス(光,水,養分,低温,強風etc.)にさらされています.特に水は,代謝を行うためにも,また,蒸散による葉からの失水を補うためにも不可欠です.私たちは,”樹木にとっての水”を軸に,樹木がどのように環境ストレスに適応しているのかを調査しています.これらの研究は,樹種ごとの生態を明らかにするための基礎となるだけでなく,街路樹診断や里山林の管理,さらには気候変動に伴う森林の影響評価といった様々な分野への重要な基礎情報になっています.

キーワード:水ポテンシャル,光合成,通水組織,キャビテーション,MRI


study2013-2

2. 生態系における菌類の生態と生物間相互作用に関する研究

異なる機能をもつ生物間には多くの相互作用があり,それらは生態系に不可欠な要素です.中でも菌類は,腐生,寄生,共生という多様な生態的役割を担っています.植物が環境に適応するメカニズムを知るためには,菌類の働きを見過ごすわけにはいきません.私たちは,植物と菌類の関係を紐解くための基礎的な研究を行っています.環境の評価や有用資源の生成など独自の機能をもつ菌根菌や植物内生菌と植物との共生関係を調べています.

キーワード:アーバスキュラー菌根菌(AM菌),内生菌(エンドファイト),線虫


study2013-3

3. 樹木医学の基礎的・臨症的研究

人間にとっての医学があるように,樹木の健康を守るための学問として樹木医学があります.樹木の病害は,菌類(カビやキノコ)や細菌類,ウイルス,線虫といった微生物や昆虫などの生物的要因だけでなく,無機養分(リンや窒素など)や水分条件,光条件,pHなどの非生物的要因が複雑に絡み合って起こっています.私たちは,他のテーマでも用いられている手法や技術を積極的に生かして,樹木の健全性を評価するための基礎的な研究を行っています.

キーワード:樹病学,マツ枯れ,ナラ枯れ,萎凋病,腐朽病害,樹木医


study2013-4

4. 里山林、都市近郊林の保全に関する研究

里山林や都市近郊林は半自然林とも呼ばれ,人間の活動と関わりを持ちながら独自の生態系を築いています.固有の希少な動植物の生息地となっており,保全が叫ばれていますが,人間社会の変化に伴い管理放棄されたり,開発による壊変で存続が危ぶまれています.私たちは,人間活動が里山の動植物にどのような影響を与えているかを,柏キャンパス周辺に残された「こんぶくろ池」や「大青田の森」をフィールドとして調査研究を行っています.

キーワード:植物群落,地表徘徊性甲虫群集,希少種,孤立化,市民活動,放射能