マツ材線虫病における樹皮下での昆虫・線虫の種間競合の解明

カミキリムシ・キクイムシ・ゾウムシ

写真1.研究対象にしている昆虫たち(右上から時計周りにシラホシゾウsp.,マツノマダラカミキリ,アカマツアトマルキクイムシ)。今年はもっと種類が多くとれるといいな・・・。

日本の森林において重大な森林病害であるマツ材線虫病において,病気を起こすマツノザイセンチュウとその運び屋であるマツノマダラカミキリが,マツを利用する他の昆虫とその昆虫を利用する線虫に与える影響を研究しています。主にカミキリムシ・キクイムシ・ゾウムシ(写真1)とそれに関連する昆虫嗜好性線虫*(写真2)が研究対象です。

修士1年では,マツ材線虫病発生地で行った丸太トラップによる結果から,マツノマダラカミキリによるキ20ムシ類のハビタット破壊が起こっていることが示唆されました。修士2年では,線虫に与える影響をもっと深く調べることと,マツ材線虫病未発生地・激害地でのデータを比べてマツ材線虫病による直接的な影響の評価及び昆虫-線虫の相互作用や昆虫同士,線虫同士での種間競合の可能性を考察していく予定です。


カミキリムシ・キクイムシ・ゾウムシ

写真2.アカマツアトマルキクイムシから分離された線虫たち。
A-C: Bursaphelenchus rainulfi(便乗性),D: unidentified rhabditid parasite(昆虫寄生性),E-G: Contortylenchus sp. (昆虫寄生性),H-I: Devibursaphelenchus cf eproctatus(線虫捕食・昆虫寄生性),J-K: Micoleztkya sp.(便乗性)
Bar = 10 μl for B and F, 100 μl for E, 20 μl for others.

*昆虫嗜好性線虫・・・昆虫と何らかの関係をもつ線虫類の総称。自分の生活史を完結させるのに昆虫を利用します。新しい生活場所まで運んでもらったり(便乗),栄養吸い取ったり(寄生),その上殺しちゃったり(殺生)します。自分の生活史を昆虫の生活史に合わせているので,多くの場合種特異的な関係性をもっています。種類によっては培養可能です。かわいいですよ~。

清水 愛(2012/4/26)