図 .(A)植物用コンパクトMRIによるヤマブドウ(Vitis coignetiae)樹幹部の撮像の様子.(B)MRIで撮像したヤマブドウ樹幹内部の横断面.樹皮の内側の白い点は水で満たされた道管を表す.
樹木用コンパクトMRIを用いると,樹体内で起こっている現象を非破壊的に計測,可視化することができます.例えば,樹幹内において通水阻害が木部のどこで生じ,どのように拡大していくのかを継続的に観察することができます.また,樹液流を可視化することによって,木部内の樹液流速度の不均質性を明らかにすることができます.これらから,環境ストレス(乾燥ストレスなど)を原因とする樹木の萎凋メカニズムや,松枯れ・ナラ枯れといった樹病による枯死メカニズムの解明が期待されています.
図.(A)低温走査電子顕微鏡(cryo-SEM).Cryo-SEMで観察した(B)スギと(C)イヌシデの樹幹の横断面.矢印は水(氷)で満たされた仮道管もしくは道管,矢頭は空洞化した仮道管もしくは道管を示す.
植物のある組織を液体窒素で凍結させると,組織内の水を氷というかたちでその場に固定することができます.試料ステージに冷却機構を備えている低温走査電子顕微鏡(cryo-SEM)を用いると,この凍結試料の組織内の水(氷)の分布を観察することができます.Cryo-SEMを用いて樹体内の水分布を可視化することで,樹体内の水の動きをより詳細に追跡できるようになりました.